「ジャンゴ」レビュー (Time Out New York)

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Time Out Tokyo様からの転載です。


『続・夕陽のガンマン』の中で、悪党イーライ・ウォラックは声なき死体に向かって「撃つときは無駄口を叩かずに、ただ撃て」と言い捨てる。
クエンティン・タランティーノはこの映画を愛してやまないが、ウォラックのアドバイスには聞く耳を持たない。
だがそれは正しかったかもしれない。

タランティーノの最新作『ジャンゴ 繋がれざる者』は、ウィットに富んだ台詞のオンパレードで、タランティーノのヒーローでもあるイタリア製西部劇のセルジオ・レオーネを彷彿させる、南北戦争前の奴隷制度時代の西部劇だ。フリッツという馬でさえ、台詞がある。

この作品では、動物でさえ雄弁にいななくのだ。
『レザボア・ドッグ』の「Mr. ピンクはMr. プッシー」に似ているか否かというくだらない小競り合いのように、KKKのメンバーたちも、リンチ前に白帽子について小競り合う。

クリストフ・ヴァルツ演じるドイツ人のドクター・キング・シュルツは、毛皮をまとい、ふるまいもドイツ騎士団のようで、西部劇にはまったく適していないキャラクターだ。

『ジャンゴ 繋がれざる者』というタイトルにもあるように、確かにジャンゴは登場するのだが、映画の冒頭1時間は、大胆にも奴隷だった黒人をパートナーにしてミシシッピ奥地に向かう外国人の賞金稼ぎを描いた映画のようだ。

その黒人、タイトルにもある“Dは発音しない”名前の男(ジェイミー・フォックス)は、シュルツが追う3人の卑劣な兄弟を知っているという。
3人はすぐに見つかるのだが、物語はここから始まる。
ジャンゴには植民地へ売り飛ばされた行方知れずのブルームヒルダ(ケリー・ワシントン)という妻がいる。
シュルツは同情し(ジークフリートのファンであるから当然だろう)、二人は復讐とブラックスプロイテーションの旅へと出発するのである。
ジム・クロウチの曲『アイ・ガッタ・ネイム』が不思議としっくりくる。

この映画は、今年最高にハイな映画監督の、最高傑作だ。
レオーネ映画にどっぷりと浸ったタランティーノは、いい加減なイタリアン西部劇と、バイオレンス映画のファン両方を同じだけ満足させる映画を作り上げた。
もちろん血しぶきは存分に期待できる。
特に、奴隷同士のレスリングマッチは、歯ぎしりするほど破滅的に暴力的だ。

タランティーノは、同様にぶっ飛んでいた『イングロリアス・バスターズ』でもそうだったように、この映画でひとつのメッセージを明確に打ち出している。
『ジャッキー・ブラウン』のロバート・デ・ニーロ演じる前科者を思い出してみてほしい。
それは、従順さの中に生まれる暴力性だ。うだるような暑さのディープサウスにもそれは出現する。

レオナルド・ディカプリオが好演する冷血非道な白人の悪役カルヴィン・キャンディの登場は、壮絶な舌戦がおこることが約束されている。
彼らは、スピルバーグの『リンカーン』にすら通ずる、言葉を巧みに操る、人類の運命を手にした巨人たちなのだ。
残念なことに、本来ならば登場人物の中でも一番饒舌な役者であるはずのフォックスは、映画の中ではシンボル的でやや存在感に欠ける。
だが、会話がヒートアップするにつれ、観客はタランティーノの解放宣言に息をのむことは間違いない。

原文へ(Time Out New York)

  by leonardo_D | 2012-12-17 16:44 | ジャンゴ 繋がれざる者

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