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レオインタビュー (エンタメステーション)

第88回アカデミー賞特集 『レヴェナント・蘇りし者』レオナルド・ディカプリオ インタビュー

http://entertainmentstation.jp/22624/


俳優道とはかくも険しいのか!?『タイタニック』(’97年公開)以降、レオナルド・ディカプリオが歩んだ道を振り返ると、そう思わざるを得ない。
幼くしてキャラクターアクターの称号を得たものの、これまでの歴史的ヒット作ではクルーの中で唯一アカデミー賞候補から外され、それを超える社会派映画に主演し続けてリベンジを誓うも、ことごとく賞レースから弾き飛ばされて来た。そんな彼がついに悲願のオスカーを手にする時が訪れた。
そう躊躇せずに言い切れるほど、最新作『レヴェナント:蘇えりし者』におけるディカプリオの演技は並外れている。神がかっていると言ってもいいほどに。


カメラが回り始めた途端に自然の驚異にさらされ、演技も何もすべてが絡み取られてしまった


── 今回、あなたが演じるヒュー・グラスという人物は、アメリカ開拓史に名を残す実在のハンターにしてサバイバーですよね。


そう、例えば僕らがキャンプファイアを囲む時に必ず名前が挙がる歴史上のレジェンドで、熊に襲われて深い傷を負いながらも、自らの勘のみを頼って過酷な荒野を何百マイルも旅した人物だよ。
でも、映画は単にグラスの道程を追い続けるだけの直線的なストーリーになっていない。
監督のアレハンドロ(G・イニャリトゥ)は明確なヴィジョンの下、主人公の旅に詩的なアプローチを試み、人間の精神力というものがいかに偉大かという独自の要素を書き加えているんだ。
僕がこのプロジェクトに加わる決意を固めた最大の理由は、アレハンドロだったと言っても過言ではないよ。


── イニャリトゥは物語の背景である1823年のアメリカ西部を再現するため、実に5年間を費やしてそれにふさわしいロケ地を探したらしいですね。
カナダのアルバータ州から南米の最南端にある諸島、ティエラ・デル・フエゴまでロケハンに行ったと伺っています。

それを受けて、俳優である自分たちは時代背景について何から何まで調べ上げて撮影に臨んだわけだけれど、一旦カメラが回り始めた途端、自然の驚異にさらされ、演技も何もすべてが絡み取られてしまったよ。


── 雪深くに埋まり、マイナス5℃の中で裸になり、厳寒の川に飛び込むなど、壮絶なシーンが相次ぎますね。中でも、冒頭でグラスが熊に襲われる場面の臨場感がハンパないです。

熊のシーンは観客にとって強烈な映画体験になるだろうね!?演じる側は恐ろしく骨が折れたけれど、アレハンドロのこだわりを優先するしかなかった。
彼は盟友のエマニュエル・ルベツキ(’13年公開の『ゼロ・グラビティ』、’14年公開の『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』で2年連続アカデミー撮影賞に輝く撮影監督)に指示して、熊がグラスを攻撃している周辺を飛び回る蝿のような目線を、観客に体感させようとしているんだ。熊の息でカメラが曇ったりとかね。


台詞のない部分こそ見てほしい
言葉にする必要のない真実が宿っているから



── ほかにも、グラスは生き残るためにバイソンのレバーを生で食し、馬の腹を割いて体内に入り、臓物の温かさで暖を取ったりしますね。ヴェジタリアンのあなたにとって、それは苦行に近い挑戦ではなかったですか?

僕らが目指したのはヴァーチャルリアリティに近い世界観であり、それによって観客を未体験ゾーンへと誘うことが目的だったから、俳優として最善を尽くすことはすべての前提だった。
結果、完成した作品には僕自身未だかつて映画では観たことのないものが映っていると思う。そう断言できるよ。


── 自然光を取り入れた映像も開拓時代の荒涼とした空気感をすくい取っていて秀逸です。ロケ地の1つであるカナダのカルガリーは、1日の日照時間が恐ろしく短いと聞きました。

1日かかりでリハーサルをやった後、日がかげる前の数時間を利用して、自然光の下、集中して撮影が行われた。
本番はまるで『バリー・リンドン』(’75年公開。自然光と蝋燭の光だけで撮影されたという巨匠スタンリー・キューブリック監督作)のようだったよ。
さらに、アレハンドロとチヴォ(ルベツキの愛称)は戦闘シーンで画期的な撮影をやっている。カメラが群衆の中の1人をクローズアップでとらえた後、カットなしでそのまま進んで次の対象物へ移行するというカメラワークに、大胆にもチャレンジしているんだ。


── しかし、最もチャレンジングだったのは俳優であるあなたではないですか?ほとんど無言のままグラスの感情と言うか執念を表現しているわけですから。

確かに困難だったけれど、その分やり甲斐があったよ。グ
ラスは全編を通してほとんど何も喋らないけれど、俳優が演じる人物の気持ちを理解し、受け容れていさえすれば、演技を介して多くのことを伝えられることに気づいたんだ。
だから、台詞のない部分こそ見てほしい。そこには言葉にする必要のない真実が宿っているはずだから。



最愛の息子を殺され、原野に放置されながらも、復讐心を火力に再起し、再び生の火を燃え上がらせるグラスは、まるでそうなることを神に許された存在かのよう。
そんなレヴェナント(黄泉の国から戻った者)の悟りを無言の熱演で表現し尽くすディカプリオは、フィジカルだけでなく、メンタルでも深い部分で役と寄り添った、今年のオスカーを獲るべき人物だと、今一度断言したい。
文/清藤秀人

  by leonardo_D | 2016-03-18 00:21 | The Revenant

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