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1月27日 読売新聞 「J・エドガー」

あけちん様、ありがとう〜〜☆

1月27日 読売新聞の記事です〜

http://www.yomiuri.co.jp/entertainment/cinema/creview/20120127-OYT8T00516.htm

虚と実 二つの人物像

 実像とは何か。
虚像があって初めて存在するものだとしたら、虚像もまた、実像の一つではないか。

 FBI(米連邦捜査局)を作り、長官として君臨したジョン・エドガー・フーバーの生涯を描いた伝記映画である。クリント・イーストウッド監督は、複雑な構成でフーバー長官の全体像に迫る。
その話法の見事さは、マンデラの凡庸な伝記映画「インビクタス/負けざる者たち」と同じ監督とは思えないほどだ。

 観客には、二つの視点が提示される。一つは、フーバーが回想録を残すために語る「虚像」だ。
ギャングと闘う英雄で、米国の正義を体現する人物。もう一つは、「実像」として語られる物語だ。
マザコンで同性愛者で、女装趣味があり、自分の手柄をでっち上げ、他人の性行為を盗聴することで権力を握ろうとする。
奇怪で、醜悪な人物だ。

 だが、フーバーは実像を認めない。
母の衣装に身を包みながらも男らしくあるべきだと信じ、同性愛を隠す。
隠すあまり、他人の性行為を暴くことに執着する。
その転倒が米国の正義となり、歴史となっていく面白さ。虚像が実像を、実像が虚像を支え、両輪となって、FBI、そして米国という、怪物を作り上げていく様子が、実にスリリングだ。

 フーバー役はレオナルド・ディカプリオ。
特殊メークも使い、20代から77歳で死ぬまでを演じ切る。
フーバーの秘書役のナオミ・ワッツも、フーバーの部下で同性愛の相手でもあるトルソン役のアーミー・ハマー=も、奇怪なメークで老年期を演じている。
あえてそうしているのだろう。

 この映画で最も美しいのは、年老いたフーバーとトルソンが一緒に食事する場面だ。
彼らは愛し合い、ずっとそうして来た。
フーバーはトルソンの老いをなじりながら、離れられない。
奇怪なメークの2人だが、奇怪だからこそ、愛情が伝わってくる。
脚本は同性愛を公言した政治家を描く「ミルク」でアカデミー賞を受賞したダスティン・ランス・ブラック。
同性愛は決して否定されていない。

 かつてイーストウッドは、米国の神話だった西部劇を虚像として否定するマカロニ・ウエスタンでスターになった。そこにも、実像と虚像の奇妙な共犯関係があった。作家としてのイーストウッドの一貫性は、誠実で揺るぎがない。2時間17分。有楽町・丸の内ピカデリーなど。(小梶勝男)
(2012年1月27日 読売新聞)

  by leonardo_D | 2012-01-27 22:16 | 雑誌

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